「子どもの理不尽な言動に耐える教師たち」このまま放置でいいのですか?⑴【西岡正樹】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

「子どもの理不尽な言動に耐える教師たち」このまま放置でいいのですか?⑴【西岡正樹】

教師に対する理不尽な言動が低年齢化している理由

 

◾️「教育委員会に訴えてやるからな」と教師を一瞥した男の子

 

 実際にあった事例を示したいのだが、学校で起こることは学校で何とかしなければならないということは、教師として重々承知している。しかし、それでもここでお伝えするのは、学校だけの問題で済ませてはいけないことがあると、今は思っているからだ。このような状況を共有して考えていかなければ、変えなければならないことも変わらない。

 

*ある低学年の教室でこんなことが起きた。(H教師の話)

 

 一人の男の子が何かにイラつき、突然教室の本棚にあった本を教室の中にばらまき始めた。時間の経過とともにエスカレートした男の子は、教師や支援員にも本をぶつけ始めたのだ。

 こうなってしまったら止めるしかない。サポートに入っていた教師が言葉で促したのだが止まらない。このままでは、他の子どもに本が当たり怪我をさせてしまう。ここは少々強引でも止めなければならない。そう判断した教師は

「止めなさい」

と腕を掴んで止めた。

 すると、男の子は教師を一瞥し

「教育委員会に訴えてやるからな」

 そう言い放ったのだ。教師はその一言に愕然とし、次への言葉が出なかった。

 

 また、こんなこともあった。これも低学年の事例だ。

  離席を繰り返す女の子がいた。そこで教師は、声を張るわけでもなく静かに、言葉で席に戻るように促した。

「もう授業が始まっているよ。席に座ってやりましょう」

 すると女の子は、声をかけサポートしてくれた教師に向かって、驚きの言葉を発したのだ。

「何で先生の言うことをきかないといけないの。先生なんて偉くもなんともないのに」

 切なくてため息の出るような言葉だ。その瞬間に沸き上がる虚無感を教師は抑えることができなかった。

 

 このような言葉を子どもに言わせてしまうのは、大人の問題である。それは確かなことだ。

 我々大人が何とかしなければ、このような言動はなくならないことも、確かなことだ。

 しかしだ、このような状況で子どもからこのような言葉が出ることは、担当教師やそれをサポートする教師、そして支援員だけの問題なのだろうか、と思わずにはいられない。

次のページ「毎日、死ね、殺すという言葉が浴びせられる現実がありました」

KEYWORDS:

オススメ記事

西岡正樹

にしおか まさき

小学校教師

1976年立教大学卒、1977年玉川大学通信教育過程修了。1977年より2001年3月まで24年間、茅ヶ崎市内の小学校に教諭として勤務。退職後、2001年から世界バイク旅を始める。現在まで、世界65カ国約16万km走破。また、2022年3月まで国内滞在時、臨時教員として茅ヶ崎市内公立小学校に勤務する。
「旅を終えるといつも感じることは、自分がいかに逞しくないか、ということ。そして、いかに日常が大切か、ということだ。旅は教師としての自分も成長させていることを、実践を通して感じている」。
著書に『世界は僕の教室』(ノベル倶楽部)がある。

この著者の記事一覧